廃墟感とアートが絶妙に融合する場所
寶藏巖(ばお ざん いぇん)国際芸術村は台北市が初めて人が生活する集落を芸術村として再生したアーティストヴィレッジです。取り壊し寸前であった集落に住民とアーティストが共生し、アートの力で観光客を呼び込み廃墟のようだった集落が現代アートの村として再生されたという経緯があります。
この寶藏巖と呼ばれる集落の歴史は1930年代まで遡ります。寶藏巖は新店渓(しん でぃえん しー)という川辺の高台にあり、台北市を見渡せる位置にあったため、ここに砲台と弾薬庫とそれを管理する兵士の兵舎が建設されました。
その後戦争が終わると農地として開拓され、さらに外省人や退役軍人が住む住居などが作られ、1970年代には200戸以上の家が立ち並ぶ村に発展しました。ただしこの住居はどれも違法建築でした。
1980年代に入ると寶藏巖を含む公館地域が急速な発展をし違法建築が立ち並ぶ寶藏巖集落が都市景観の面で適していないという理由から取り壊し新しい街を作る都市計画が立てられますが、寶藏巖に住む住人たちがこの計画に反対をし、都市計画を進めたい台北市政府と反対住人たちの争いが続きました。
寶藏巖集落に行ってみるとわかるのですが、廃墟のような村のすぐ横にバスケットコートなどがある近代的な公園があり、これは都市計画に反対する住民を無視して台北市が強引に作ったもので、台北市と反対住民の争いの象徴的な場所となっております。
さて、そんな台北市と反対住民の争いが解決しないところに、台湾大学の学生たちが寶藏巖を調査することになり、反対住民たちと意見を聞いた結果、1997年9月に寶藏巖の姿を残したまま都市計画を進める案としてデザイナーやアーティストが常駐するアートヴィレッジとすることが決まりました。
そしてNGO団体や都市改革組織などの協力を得て住民が住んだ状態で徐々に改修が進み、2004年2月に台北市より正式に寶藏巖が歴史集落および歴史建築物に指定、2006年6月に当時台湾で有名であったアーティスト吳中煒(うぅ じゅぉん うぇい)が入村したこと皮切りに寶藏巖全87戸のうち22戸にアーティストが常駐することになり、2010年10月2日に正式に寶藏巖芸術村運用部が立ち上げられ現在の寶藏巖国際芸術村の姿になりました。
寶藏巖は集落中に現代アートが施されており、迷路のような集落を歩き回るだけでも楽しむことができ、また廃墟のように見える建物の中にはアーティストのショップがあったりと見所が満載です。
ちなみに以前紹介したシナモンロールが美味しい小料理屋さん秋紅肚房もこの寶藏巖集落内にあります。
寶藏巖は小高い山に作られた非常に密度が高い集落で人が住む建物と廃墟が混じり合い、まるでえんとつの町プペルに出てくる町のような作りになっており、廃墟やスチームパンクが好きな方にはたまらない場所となると思います。
また寶藏巖の住民がすむ居住区は昔ながらの台湾の生活が残されており、台北ではほとんど見ることがなくなった台湾風駄菓子屋さんもあり、あまりの懐かしさに駄菓子を大人買いしてしまいました!
寶藏巖国際芸術村は華山芸術区や松山芸術区みたいに華々しいアート作品があったり、有名アーティスト個展が開かれたりする場所ではありませんが、昔ながらの台湾の光景と廃墟とアートが混ざり合い独特な雰囲気を作り出しています。
少し交通の便が悪いですが、いつもとは違う台北を味わいたい人にはオススメのスポットとなっていますので、ぜひ足を運んでみてください。
寶藏巖国際芸術村 住所 | 台北市汀州路三段230巷14弄2号 |
アクセス | 台北地下鉄 公館駅 出口1からタクシーで5分(徒歩20分)。 |
ホームページ | https://www.artistvillage.org/ |
開放時間 | 火曜日〜日曜日 11:00~22:00(各店舗営業時間は異なります) 月曜日定休 |