お供え用ケーキだった台湾カステラがなぜ今、日本でブームになっているのか台湾人目線で調べて見ました。

台湾カステラ

台湾カステラブームがいまいち理解できないので調べてみた

台湾プラス編集長です。
最近日本語で台湾と検索するとGoogleの上で多くの台湾カステラ(古早味蛋糕:ぐぅ ざお うぇい だん がお)に関するサイトや記事を見かけます。その内容はどれもふわふわして美味しいや新食感など好意的なものばかりで台湾人としてはとても嬉しのですが、それと同時に若干違和感を感じる部分もあります。

その理由としては30年前、私が子供の頃は台湾カステラはこんな嗜好を凝らしたスイーツじゃなかったし、ふわふわはしていたけどそんなに美味しいものではなかったし、そもそもパサパサして水なしでは食べれないケーキだったのが、なぜ日本でこんなにブームなのか理解できなかったため真面目に調べてみました。

台湾カステラってなーに?

台湾カステラは「古早味蛋糕」と呼ばれている台湾に昔からあるケーキで、起源を辿ると日本統治時代に日本人が台湾に持ち込んだカステラが台湾人好みの味に改良されたもので、「古早味」は「昔ながらの味」という意味で直訳すると「昔ながらの味のケーキ」という名前なのですが、これは特定のテイストのケーキを指したものではなく、昔から町のパン屋さんとかに置いてあるようなケーキの総称であり、古早味蛋糕にはお店によってはチーズ味やチョコレート味、かぼちゃ味などあり種類は多くあります。共通していることといえば「大きく厚みがある」という点と、昔はバターが高級食材だったためバターを利用していない安価なケーキという点でした。30年前子供だった筆者の世代だと、安価でサイズが大きく量が多い、どこでも手に入るケーキという印象を持っております。

それはお母さんがケーキ買ってきたよー!と言い、ウキウキして見てこの台湾カステラだと一気にテンションが下がるようなケーキであり、また仏教や道教などの宗教のお祈りの際にお供え物として使われることも多く拜拜蛋糕(ばい ばい だん がお)と呼ばれており、おばあちゃんが大好きなケーキでもありました。

パン屋で見かけたお祈り用ケーキ(台湾カステラ)

昔々はお供え物の用のケーキ。
30年ぐらい前はお母さんが買ってくるとテンションが下がるケーキ。

各地の観光地で名物お菓子となる

さて、そんな子供のテンションを下げるケーキの代名詞だった古早味蛋糕ですが、高度成長を続ける台湾では国内旅行のブームなどがあり台湾国内各地で観光地が発展し、2000年代に入るとどの観光地にもこの古早味蛋糕の美味しい店というのが登場することになります。この辺りから大きなオーブンで豪快に焼くプルプルふわふわした形の台湾カステラが登場します

日本で言うとお饅頭やお団子と似ており、どの地域にでもあった食べ物だった為その地域に根付いたお菓子となり、その中でも味がいいお店や改良してクオリティを上げたお店が有名になり観光地の中心部に出店をする。という流れで地域の名物化しその地域のお土産となりました。

私が記憶にあるだけでも淡水にある緣味と言うお店の現烤蛋糕、新竹にある春上と言うお店の布丁蛋糕、台南にある名東と言うお店の現烤蛋糕は商品名に違いはありますが台湾カステラの名店で現在でも多くの台湾人がこの地域の旅行のお土産として購入しています。
(台湾カステラはお店によっては現烤蛋糕(しぇん かお だん がお)、布丁蛋糕(ぶ でぃん だん がお)、拜拜蛋糕などと呼ばれております。)

どこにでもあるが故にその地域に根付き改良に改良を重ね名物となった。

韓国で台湾カステラのブームと映画パラサイト

韓国の台湾カステラブーム

きっかけや時期は定かではありませんが、2015年〜2016年に台湾の淡水を訪れた多くの韓国人ブロガーやYoutuberがその大きくプルプル震えるケーキの見た目のインパクトの強さから写真を撮り韓国国内で紹介をしたことにより、韓国で台湾カステラの知名度が上がり、2016年には韓国国内で400店舗以上の台湾カステラ店舗が開店する一大ブームが起こります。1年で400店舗ということは毎日どこかで1店舗以上の台湾カステラ店がオープンしているということになりますので、そのブームはものすごいものでした。
ちなみにこの韓国ブームのころから古早味蛋糕は「台湾カステラ」という名称で販売されだしました。

しかし、そんなブームは一瞬にして終わりを迎えます。
2016年11月に韓国で鳥インフルエンザが発生し卵の価格が高騰したことでケーキの原価が上がり、販売価格が上がったことによりこのブームの勢いが下降線を辿り出します。
そして2017年3月に「食べ物Xファイル」という食べ物のネガティブな面を特集する韓国のテレビ番組で当時台湾カステラの最大チェーン店だった淡水大王カステラというお店の台湾カステラの作り方が放送されたのですが、その中で台湾カステラを作る際に大量の食用油や業務用の液卵などを使用して作るという内容が放送されて、それがきっかけで台湾カステラは油が多く使われているから不健康というイメージが定着し台湾カステラのブームは一気に終息へと向かいます。
一時は韓国全土で400店舗以上あった台湾カステラ店ですが、現在では40店舗もない状態となっております。

※ちなみにこの食べ物Xファイルの放送はのちに物議を起こすこととなります。番組内ではあたかも油を使って作るカステラは不健康だと必要以上に煽って放送していたのですが、台湾カステラを作る際に食用油を多く使うことは通常レシピであり、店舗が業務用の液卵を利用するのも特に問題がなかったものでした。
その後この食べ物Xファイルは様々なやらせ疑惑を起こし番組終了になることになります。


ブームの鎮火から2年後の2019年に制作されアカデミー賞で4部門を獲得した韓国映画「パラサイト 半地下の家族」ではお父さんギテクは退職後「チキン店」と「台湾カステラ店」の企業で失敗したという設定になっており、韓国ではこの元台湾カステラ店オーナーというのは失業者の代名詞となっているとのこと。

韓国で大ブームを起こし、良くも悪くも「台湾カステラ」という名前がスイーツとしての市民権を得る

日本でブーム到来

日本で最初に台湾カステラ専門店ができたのは2017年東京高円寺にある新カステラというお店になります。
しかしGoogle上で台湾カステラという名前が多く登場し出すのは新カステラが開店してから2年後の2019年となっているため新カステラがブームのきっかけというのは考えにくく、また韓国で使われていた「台湾カステラ」という名称がそのまま日本でも使われている点で現在日本で起きている台湾カステラブームは韓国のブームから来ている可能性が高いと考えられ、映画パラサイトの影響も後押ししたのか2020年、20201年と一気に人気ワードになっています。

2020年には首都圏や大阪で多くの台湾カステラ店が開店しておりブームの兆しがあるりますが、私が一番驚いたのは銀座東急になんと台湾カステラ店がオープンしたということ。
なんだろう・・・昔はお祈り用のケーキだったのが、今では銀座のスイーツですよ。

日本では銀座にお店が出るほどのおしゃれでキラキラしたケーキとなる。(現在進行形)

あとがき(というか編集長の感想)

古早味蛋糕というケーキは昔々日本人が台湾に持ち込んだカステラがきっかけで作られ、おばあちゃんの世代ではお供え物用のケーキとして使われたり、食べ盛りの子供の胃袋をとりあえず量で満たすケーキであったものが、台湾国内で年月を経て改良され進化し、韓国に渡り台湾カステラと名前を変え打ち上げ花火のように盛大にブームを起こし消えて無くなったけど、日本で新しいブームを起こそうとしているという面白い運命をたどっているこの台湾カステラですが、台湾人としては昔から身近にある味でぜひ日本の人たちにも食していただきたいと思っております。
ただ、タピオカブームの時のようにラーメンに入れるとかリップクリーム作るとか変な利用方法はしないで欲しいかな・・・

あと何度でも強調して言いたいことは、台湾カステラは昔はそんなにキラキラしてなかった!むしろパサパサしてました!

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